デンソーの製作所とその事業内容
デンソーの各製作所には各製造部があり、それぞれ異なった製品を作っています。以下はその一覧。
・スタータ、オルタネータ、インバータ、MGの製造
西尾製作所
・カーエアコン、ラジエータ、電子制御式ディーゼル・ガソリン燃料噴射装置の製造
高棚製作所
・情報通信関係製品、走行安全関係製品、半導体デバイス/センサ関連製品の製造
大安製作所
・点火系製品、先進安全関係製品、動弁系製品、駆動系製品、吸排気系製品の製造
幸田製作所
・IC、電子制御製品の製造
豊橋製作所
・カーエアコン、サーボモータ モジュール、自然冷媒CO2家庭用ヒートポンプ給湯機の製造
阿久比製作所
・生産設備、熱流センサ、LCPモジュール基板の製造
善明製作所
・電子制御式ディーゼル燃料噴射装置の製造
湖西製作所
・ワイパシステム・パワーウインドウモータ等、自動車用小型モータの製造
豊橋東製作所
・ブロワモータ・クーリングファンモータ等、自動車用小型モータの製造
東広島工場
・ワイパシステム・ウオッシャシステム等、自動車小型モータの製造
引用:㈱デンソー拠点一覧 | 企業情報 | DENSO - 株式会社デンソー / Crafting the Core /
このようにデンソーの各製作所・各製造部はそれぞれ異なった製品を作っていて、そしてその製品に応じて作業環境が異なってきます。
通常の建屋内での作業が基本となりますが、他にクリーンルーム(CR)内での作業があり、CR内でも職服・防塵服・クリーンスーツを着用する現場に分かれています。
一日中働いても汗もかかなく少しも汚れないきれいな職場から、油にまみれる、有機溶剤を使用する、鉛を扱う、重量物を取り扱う、熱処理、溶接、建屋内外を移動する職場など、さまざまな職場があります。
デンソー流モノづくり
デンソー製作所の生産業務の基本として、安全→品質→生産の優先順位にて作業を行います。
まずは安全が最優先で次に品質が来ます、最後に生産という順位で今までもこれからもそれは変わることはありません。
作業は標準作業書に基づき標準時間で行います。そして出来高管理表の出来高90%以上を目標とします。
期間工が担当する具体的な作業についてはマシンオペレーター、機械加工、外観検査、物流の4つになります。この他の作業もあることはあるのですが、9割方はこの4つのどれかになります。
この4つはそれぞれ独立していたり、オペレーターをしながら外観検査や機械加工、モノを運びながら(物流)の機械加工など何かしら絡み合っていることもあります。
マシンオペレーター
機械や設備の管理や操作を行います。1人で複数の機械・設備を管理・操作したり、複数人で複数の機械・設備を管理・操作したりします。
大まかな流れとして、朝電源を入れて設備の立ち上げ、マスターチェックで製品の良品・不良品の判定を確認する、実際に製品を設備に投入し各種の工程を経て、払い出しされた製品を次工程に渡して完了となります。
1日の終わりか週の終わりに設備を立ち下げ電源を落として終了です。
各種の工程については製品や設備によるのですが、機械加工、機能検査、寸法調整など多種多様な工程があり難易度も様々です。比較的に異常・不良が少なく扱いやすい設備から、異常・不良が多発し設備保全が常に張り付くような難しい設備まであります。
生産台数・品質管理・設備保全の3つを管理します。扱いやすい簡単な設備なら基本製品を投入して出てきた製品を取り出すだけで難しくありません。設備の異常や品質不具合もあまり発生しないか、発生しても社員に打ち上げる程度で済みます。
これが難しい設備になると、設備にすぐ異常や故障が出ます。頻度が高いため期間工も普通に異常処置、復旧操作を覚えさせられます。
たいてい設備の異常や故障の前後には製品の品質不具合が出て、それの確認と生産台数の低下が発生します。そして挽回のための生産とまた設備の異常や故障と、これの繰り返しになります。
職場によってマシンオペレーターを社員限定にするところもあれば、難易度が高い工程を普通に期間工にやらせるところもあります。
機械加工
デンソーの製作所の作業で最も一般的なのはこの機械加工です。
流れとして製品を設備にセットしてスタートボタンを押す。製品が加工されてそれを取り出して簡単に出来栄えを見て次工程へ渡す、というもの。難易度はただセットして取り出すだけの簡単なものから、ややカンやコツが必要になるものまであります。
機械加工の種類には様々なものがありとても書ききれません。製品やその用途によって多くの設備が存在します。いくつか例を挙げるとエアーブロー、プレス、テープカット、グリス塗布、ビス打ちとかこんな感じです。
機械・設備を使わない純粋な手作業というのも存在します。シール貼り、テープ貼り、グリス塗り、パレット詰替など種類は豊富。
組付作業はどこでも比較的よく見られる工程で、電動ドライバーなど簡単な工具を使用したり、専用の機械を通して組付けをします。
製品の生産はすべて出来高管理表で管理されており、1時間当たりの出来高、日当たりの出来高が決まっています。1つ1つの作業は簡単だとしても毎日毎週毎月と交替勤務で作業をしていくわけで、ある程度は大変と言えるでしょう。
外観検査
製品に異常がないか確認する作業です。
・肉眼による検査
・拡大鏡による検査(数倍)
・顕微鏡による検査(10~20倍)
・モニターによる検査(数十倍)
の4種類があり、製品の大きさや検査する箇所により使い分けます。
基本的にいくつかの工程ごとに外観検査工程が設けられていて、その都度、異常や不良を取り除いていきます。また、入庫前最終外観検査や出荷前最終外観検査といった大変重要な工程もあります。
外観検査は見ることが中心になるので、身体的には楽な部類になります。ただし、異常や不良を見逃すと納入不良につながるので責任は重大です。
また、1つの場所に固定される、時間が経つのが遅いといったこともよく聞かれます。主に女性や年配者に向いている工程と言えるでしょう。
難易度は簡単なものから難しいもの、重要なものまでさまざまです。上述の工程ごとの外観検査は見る箇所も少なく比較的容易で、期間工が担当したりします。
逆に入庫前最終外観検査や出荷前最終外観検査などは、難易度が高く最重要でベテランの社員が担当します。
よく期間工の意見で「外観検査は楽勝」といったことが聞かれますが、それは比較的容易な工程を担当しているからです。本当に重要な急所となる工程には期間工は関われないからそのような意見が聞かれるのです。
物流
製品や部品の運搬。通箱の作成・解体・洗浄。製品の梱包、出荷など。
物流作業は物流課といって1つの組全体で物流業務を担当したり、組に運搬の工程(水すまし)がある場合があります。
エレカや台車を使って工程の最後で完成品の入った通箱をロケに運び収める。そこで空箱を積んで工程の最後に戻り空箱をシュートに収めて、また完成品の入った通箱をロケに運び収める。必要に応じてカンバンを移動させる。これの繰り返しになります。
製作所内での運搬業務は安全が最優先されます。製作所内で(交通)事故を起こしたらシャレになりません。エレカのスピードや運転、台車の運びなど細心の注意が必要となります。
製作所間を移動した通箱は、返却された際に洗浄するのが基本となります。物流課ではこの業務も担当しています。また生産の状況によって必要となる通箱が異なるため、通箱の作成や解体も担当します。
デンソー期間工の作業をまとめると
デンソー期間工の作業は自動車会社のライン作業に比べて楽だ、という意見がよく聞かれます。これは確かにその通りで純粋な肉体的な負担はデンソーの方が少ないと言えます。これは多くの経験者の言う通りです。
ただ、デンソー期間工の作業は負担は少ないにしても決して楽ではありません。各作業は標準時間を守って標準作業をしなければなりません。マシンオペレーターでも機械加工でも出来高を出し続けるのはかなり大変なことです。
これを毎日毎週毎月毎年繰り返して行っていきます。しかも交替勤務の長時間労働でやっていくわけで、これがやさしいはずがありません。デンソー期間工の作業は大変だと言えます。
各作業のアタリハズレも大きいです。マシンオペレーターでは誰でもできる簡単な工程から人がノイローゼになってしまう難易度の工程があるし、機械加工でも誰でもできる工程からある程度の技量が無いとできない工程までさまざまです。
人のアタリハズレもあります。自職場の社員や期間工がいい人・人格者ならば何も問題はないのですが、必ずしもそうとは限りません。いろいろな人がいる中で周りに合わせて作業をしていくのはとても大変なことです。
「アタリ工程はこれを死守し、ハズレ工程はこれをうまくかわす」、デンソーで期間工を長く続けていくにはこのような術を身につける必要があります。